PANKENの製法。洗い物。打ち粉+飾り粉。

パンの仕事で面倒と思うことは、洗い物です。
使用した道具類を毎回きれいに洗うわけですが、
パンの素材に油脂未使用で、ほんとよかった。
洗い物に関連した話になりますが、
アメリカでいちばん気に入ったパンはチャバタ(Ciabatta)。
外皮は固めで、なかはしっとり。PANKENのカンパーニュ
等のしっとりさとはまた違った弾力の大きなパン。
イタリアのパンで、これ、素材にオリーブ油が入る。
だからPANKENでは作らないけどね。
番重(パン屋で何段も重ねて積んである箱あるでしょ)の底に
オリーブ油を塗って、そこにミキシング後の生地をのせて発酵、
という過程がチャバタにはあり、そんなことをしたら、番重、
あとで洗うのたいへん。作るとしたら、別の方法考える。
番重の用い方。生地を入れて発酵、あるいは完成したパンを
大きな番重に入れて運ぶために用いられること多いですが、
僕はどちらもしない。
一次発酵はコンパクトなバケツかボールかミキサー内で。
2次発酵中のパン生地は棚に並べて、乾燥しないように番重で
蓋する。で、乾燥度合によって、霧吹きする。
番重の内側に軽く。「軽く」を数十分置きに。
1回も霧吹きしないこともある。また生地の種類によって
霧吹きの度合は異なる。
乾燥度合はその日その日の湿度によるから生地の状態を見て、
霧吹きを調整する。
番重は蓋なしの箱だから、さかさまにして蓋として使用する場面、
見たことないけど、僕は蓋としてのみ使用してます。
ただの蓋だから殆ど汚れず。あと処理がカンタン。
生地が直接触れる道具としては、ポリエチレンプラスチックの
薄いまな板シートを使ってます。生地の形成も発酵もシート上で。
なので、作業台も殆ど汚れない。
形成後の2次発酵はクッキングシートに一つ一つのパンを載せて。
大きく膨らんだらクッキングシートごと天板(オーブンの鉄板)
に移動。焼きあがったら、クッキングシートを外す。
ということで、天板汚れず。
もちろんパン作りのいろいろな過程で、洗い物は発生するけど、
洗う手間が極力かからない合理性を考えます。
ポリエチレンプラスチックの薄いまな板シートは、
どんな料理でも便利だし、洗う手間もカンタン。
洗い物でいちばん神経使うのは、天然酵母を作る容器、保存する
容器ですね。熱湯消毒しないと、雑菌にやられる。


あと、打ち粉について。パン屋って、作業中に粉打ちまくり
だけど、僕は打ち粉を殆ど使用しない。
だから、生地の形成中も空気すっきり。工房汚れず。
辺り一面、粉だらけというお決まりの製法とは無縁です。
打ち粉を使用しないために必要なことは、生地の水分を
極力落とすことです。水分が多量な生地はべたべただから、
打ち粉が必要になる。打ち粉なしでは作りにくいし、作りにくい
ということは作業効率が悪くなるから量産できない。
量産できないと儲けが少なくなる。だから打ち粉をする。
また、水分を多くすることで、粉のコストを下げる。
天然水使用なら水分コスト馬鹿にならないけれど。
で、重量驚くほど軽いパンを量産することで、儲けを産む。
という穿った見方もできるほどに、打ち粉を使用することが
当たり前という製法じたい疑問なわけで。
打ち粉することで一段と美味しくなるなら別だけど、
全然関係ないし、まったく必要のないものです。
ただPANKENでは、焼く前に、焼きを抑制するため、
多めの粉をふります。それは飾り粉ということですが、
焼きあがったあと、その飾り粉はすべて落としてしまいます。
飾り粉たっぷりの生地にクープ入れてハードに焼けば、
粉の白とクープで裂けた生地のこんがり具合のコントラスト
きれいなパンになるから、これぞパンの伝統みたいな風格も
あり、大好きだし、パン表面の模様考えるのも楽しい。
でも、冷凍すると飾り粉が味の面で不適合と思っていて、
PANKENではやりません。
で、打ち粉というのは生地内部に吸収されてしまうだけで、
パンの生地種類によっては、生地のしっとりさを奪うことに
もなるから、PANKENの超しっとり生地には厳禁です。
硬度1551ノンシュガーはバゲット・タイプの生地だから、
打ち粉を微量使用します。それによって気泡を多少作って、
生地の繊維をわざと分断する効果を狙います。
蕎麦は作ったことないからわからないけど、
蕎麦では、打ち粉を使うことで麺が整いきれいに仕上がると。
パンでの使用も一応、同じ効果があるのだけど、生地がもつ
水分次第で変化する話になる。