全米危険都市ランキング25

休業前のパン作りもあとわずかとなった。
ここ40日間ほどは普段の生産量の120%、時に140%の日々も
あって、かなりハードだったが、なんとか体調も崩れず。
平行してアメリカでの住居探し。去年は初めてということも
あって最初はうまく行かなかったが、それでもいい出会いに
恵まれて最後はすんなりと決まった。
今回は要領を得ているので余裕と思っていたら、とんでも
なかった。サンフランシスコの複雑な、起伏の多い地形は
ほぼ分かっているので、車椅子での移動が容易な、電車の駅に
近い場所をピンポイントで探していき、日々ピックアップした
物件は約50件(不動産業者を通すと高くつくので、去年同様、
個人所有の物件)、こちらの家族紹介と渡米目的等の打診メールを
入れる。しかし全然反応がない。それでも数件ほど反応があり、
メールのやりとりになるが、交渉が成立しない。実際問題、賃貸
したいと見学する人たちよりも、異国の僕らを選ぶ理由が必要に
なる。普通に考えて、勝てない。だから、少し不便な、人気のない
場所か、少し値が高めの物件かへと流れて、でも、うまく行かない。
サンフランシスコのダウンタウン(中心街)(下町という意味ではない)
でなくても、と思いはじめ、近郊のバークレーオークランドの物件
も平行して探し、どこに住むかは天に任せる具合で、そのうち、
いろんな人とメールのやりとり白熱しはじめ、なかでもオークランド
の芸術性あふれるアパートに惹かれ、そこは即座に他の人の入居が
決まってアウトとなったが、なぜかそのオーナーとの関係は続いて、
去年は行かなかったオークランドへの興味が急激に増した。


サンフランシスコの東対岸にオークランド(Oakland)はある。
オークランドの北にバークレー(Berkeley)がある。
BARTという電車で移動すれば3つの都市間は10分〜25分。
近いわけだが、それぞれの都市の様相は異なる。
都市の規模で言えば、サンフランシスコ79万人、
バークレー10万人、オークランド40万人都市。
バークレーは全米のなかでも革新派の市民性をもつと言われ、
実際、バリアフリー等の先駆的なモデル都市であり、また、
PANKENにも関係するが、オーガニック食志向の先駆的な存在
でもある。政治に関しても反体制派の歴史がある。
一方、オークランドは、観光案内に殆ど出てこない。
たとえば「地球の歩き方」には一行も登場しない。
全米危険都市の8位に位置しており、犯罪多くて、
貧民層が19%と高くて、有色人種の多い土地。
白人30%、黒人35%、アジア15%、その他20%
(ちなみにサンフランシスコは白人50%、黒人8%、
アジア30%、その他12%、貧民層は10%)
しかしオークランドもどんどん変化している様子。
エコ都市になろうとしている。例えば、最近、飲食店の
テイクアウトのプラスチック容器の使用禁止の法律が
できた。容器は天然素材を使用しなければならない。
コストが10%〜15%アップするが、それを商品価格に反映
させてはならないという規則付の法律。
カリフォルニア州のなかでオークランドがまず最初に
実施、守らない店には段階的な罰金が科せられる。
今年半ばにはサンフランシスコ市内でも実施される予定。
無法地帯と言われた地区の再開発も進んでいる様子。
この3つの都市のどこに住むか、迷いに迷ったが、
結局、数日前にようやく決まった住居は、サンフランシスコ
ダウンタウンのなかの、Church St駅の近く。
僕らにとっては理想的な立地の、美しすぎるアパートなのだ
が、このアパートの交渉に、なんと3週間もかかった。
なにを考えているのか、つかみにくいオーナーで、
こちらが内心苛立って、しかし文面は穏やかに徹し、
相手の貴族的な時間のペースに付き合っていると埒が明かず、
質問してものらりくらりと交わされ、貸す気がないのかと疑い、
こちらの都合もあるし、「あなたのアパートが私たちにとっては
理想だけど、私たちは早急に住居を確保したく・・・」とメール
すれば、「急ぐことは快適ではない。私はあなたともっと話したい」
と返ってくる具合で、それが2月末日のこと。
オークランドにどでかい綺麗なアパートがあり、殆ど交渉成立して
いたが、やっぱり最も理想と思える物件に賭けてみようと決心し、
オークランドは断って、それから一週間、毎日なんやかんやとメール
し、でも、反応鈍く、もうダメか、やっぱりオークランドにしておけば
よかった、と思ったりして殆ど諦めかけた頃に、
「あなたの忍耐強さに深く感謝する」とのメールを頂いた。
過去、忍耐強いと言われたことはないから新鮮だったが、それほど
交渉は長かったし、なんとも感無量の気分になった。
その後、そのオーナーは、まったく別人かと思えるほど
親愛に満ちていて、結局、長女が障害児であることで、受け入れる
側の「責任」という言葉が何度かメールに差し挟まれていたから、
その辺りに関して、より慎重であったとも言えるのだろう。
それにしても不思議。「あなたの家族が快適に過ごせるように
私は最善を尽くす」との熱いフレーズに至る誠意を、前半の2週間
には想像もできなかった。なにが起こるかわからないというか、
努力が報われるということもあるのだなと、努力という言葉も苦手
な僕には、とにかく熱意のようなものは、なにかしら伝わるまで
諦めない、ダメモトでもいいから、それしかないな、と思える
3週間だった。


◆全米危険都市ランキング25を下記に。
尤も、アメリカというのは、例えば、東京の銀座のど真ん中を
歩いていて、通りを一本渡ると突然、危険な匂いの別世界、
というのはないわけだけど、アメリカには、ある。だから、
一概にこの都市はどこもかしこも危険とは言いにくい。
サンフランシスコだと、ユニオンスクエアのある中心街から
少し西へ行くとヒルトンや日航の高層ホテルがあり、その西側
のTaylor streetに入ると、雰囲気が変わる。でも、それは貧
ということであって、僕らがそこを歩いたとき、頑強な黒人が、
車椅子の娘に「Peace」の絵葉書をそっと置いた。


MOST DANGEROUS 25

1. St. Louis
2. Detroit
3. Flint, Mich.
4. Compton, Calif.
5. Camden, N.J.
6. Birmingham, Ala.
7. Cleveland
8. Oakland, Calif.
9. Youngstown, Ohio
10. Gary, Ind.
11. Richmond, Calif.
12. Baltimore
13. Memphis, Tenn.
14. Trenton, N.J.
15. Richmond, Va.
16. Kansas City, Mo.
17. Atlanta
18. Cincinnati
19. Washington
20. North Charleston, S.C.
21. Reading, Pa.
22. Newark, N.J.
23. Little Rock, Ark.
24. San Bernardino, Calif.
25. Orlando, Fla.