旅の雑談

国家・人種でいえば、これまで40カ国ぐらいの人と出会った。
そのなかにアメリカ人はいない。アメリカ国籍をもった人はいるが。
アメリカは銃社会であるだけで、生涯、足を踏み入れることはないし、
興味もない、単純にいえば、嫌いな国、そう思う面もあるのだけれど、
障害者という切り口でいうと、どうしても避けて通れない場所で、
そもそも、国家の政治手法等を批判することと、個人個人の人と出会う
ことは、全然別の話で、また、嫌いな国だから訪れたくないというのも
傲慢な話で、1990年にアメリカで制定されたADAという略称をもつ
障害者の法律がある国、それだけで、興味の対象にもなり得るし、
僕ら家族にとっては新天地への好奇心が沸々とあって。
今後、数年かけていくつかの国の福祉状況を経験したいと思っています。
ADAについてのリンク。
http://www.normanet.ne.jp/~ww100136/ada-kazaguruma.htm


観光旅行には昔から興味がなく、知らない国に行けば、そこで
暮らすイメージで、目的をもって動く。不思議なこととしては、
昔、イギリスからシリアに行き、イギリスに帰国したとき空港で、
イスラエル人の女性にいきなり声かけられて、
イスラエルはどうなっている?と。
こっちは、?で、事情を聞くと、内戦状態で父母の安否が確認できず、
僕をユダヤ人と間違えての質問だったのです。そのとき髭はあったが、
黒い帽子はかぶっておらず・・・これは特異な出来事だけど、
フランスに行くと、現地で親しくなった人から、あなたはフランス人だ、
といわれ、イギリスでも、スペインでも、同じように誰かに言われ、
そこに長くいると、その国の人モドキになる。これは、その国の人たち
の友情のしるしだろうけど、とてもうれしい表現で。
海外に出ると自分が日本人であることが浮き彫りになるようにも思うが、
ロンドンを歩けば、いろんな人種とすれ違い、多国籍のなかの一人で
あって、それがとても心地よい。だから、久しぶりに日本に帰国して
空港から電車に乗って車両には日本人だらけだと、それが妙に窮屈に
感じたりする。海外に出て得たことは、どこの国でも楽しく暮らして
いける、ということ。砂漠でベドウィン(遊牧の民)と時を過ごし、
粗末な食べ物しかなくても、また独裁者が統治し、暗殺が身近にも
起こり政府の批判をすれば死刑という中東の国で、軍医の友人と歌手
志望の友人と、イスラムの歌を一緒に作ったり、イギリスで暮らして
いたフラット(アパート)のドアが斧で叩き割られて、パソコンやら
いろいろ盗まれて、その数日後に黒人の犯人が逮捕されたのだけど、
事件後あれこれ手助けしてくれたのがジャマイカ出身の黒人で、この
人の妻(イギリス人)が看護婦だったことから、我が娘の障害に有効な
新薬(イギリスで開発)の情報を調べてもらったり、トルコでは毎日
新しい出会いがあって、ホメロス誕生の地イズミールの露店のおっちゃん
が日本の歌のテープを流していて、上手に日本語で歌うけど、意味は
わかっておらず、歌ってるうちに仲間が集い、もちろん和気藹々ばかり
ではなくて、旅人相手のだまし商売が横行するトルコでは飛び込みの宿
で料金を訊ねたら、100と返答、100?高すぎる、別の宿を探す、と言っ
て出ようとすると、じゃあ、1でいい、と宿の主人。なんだそれは、と
思いつつ宿泊して翌朝チェックアウトするときには、10と言われ、
いや、昨夜は1だった、と返すと、じゃあ、1でいい、と・・・書き出
すとキリがないので、この辺でやめるが、とにかく、世界は楽しい。
パン作ったり小説書いたりは密室の作業で、密室の想像性のなかで
生きるのもまた楽しいのだけど、異国にいるだけで、小さな価値観が
ガラリと変化する、そういうふうな刺激が未知の時間のなかにある。